2025.10.27
alto BLOG
アルトブログ
2025.10.19
【首こり解説 第二弾】ストレートネックの原因筋 5選 ― トリガーポイント鍼治療の視点から ―
皆様こんにちは!
武蔵小杉のトリガーポイント専門の鍼灸マッサージ治療院alto
院長 加藤です。
今回は前回のブログ
ストレートネックが肩こり、頭痛の原因じゃない?
の中では、ストレートネックだから痛いのではなく、「痛みを避ける行動がストレートネックをつくる」
今回ご紹介する筋肉がトリガーポイントの影響を受けると
辛いからといって「良い姿勢用の低い枕」にせっかく変えてみたのに痛みを避ける肢位が取れなくなり、結果として痛みが増す事もある。
といった内容でした。
「ストレートネック」とは、頚椎本来の前弯カーブが減少し、首がまっすぐに伸びてしまった状態を指します。
しかし実際のところ、原因は“骨の形”ではなく、首を支える筋肉のバランスの崩れにフォーカスする必要があるのです。
本記事では、原因の多くを占める筋緊張を解消すべく
臨床でよく見られる「ストレートネックの原因筋」を5つ取り上げ、
それぞれの特徴やトリガーポイントの症状を、臨床現場の感覚で詳しく紹介します。
原因筋1:胸鎖乳突筋(鎖骨頭・胸骨頭)
特徴
胸骨と鎖骨から耳の後ろ(乳様突起)へ伸びる筋肉。
スマートフォンや下向き姿勢で短縮し、頭を前に引き寄せる力が強く働きます。
噛みしめやめまい(クルクル回る一時的な眩暈)も大きく関連してこれらの原因にもなる事が多いです。
前方頭位姿勢の中心的な原因筋のひとつです。
トリガーポイント症状
・側頭部や後頭部の鈍痛、耳周囲の圧迫感、ふらつき、めまい
・関連痛領域:耳の後ろからこめかみ、頭頂部にかけて痛みが広がり、
または目の奥・顎下部に放散することがあります。鼻や喉の奥が締め付けられるような感覚が起きることも多く、これが原因でヒステリー球(梅核気)、後鼻漏による圧迫感、風邪は治ったのにしつこく残る鼻の奥の圧迫感を引き起こしている事もあります。
当院での施術
・当院では胸骨頭と鎖骨頭を丁寧に触り分け潰さないように優しく包むようにトリガーポイントを刺激していきます。しっかりと刺激されると顔をしかめたくなる様な日頃の頭痛を感じている部分に響いて辛いけど「そこそこ!」だからしっかり押して!と言った感覚が引き起こされます。
仰向けで主に首の前面側面をマッサージしていくのですが、よくご患者様より「こんなところは初めてマッサージされました!!」と驚かれます。とってもとっても大切な筋肉なので、私もそれに驚きます。
鍼を用いることも多くあります。
頭蓋骨への付着部や鎖骨・胸骨への付着部付近、鎖骨頭・胸骨頭を触り分けて捉えた時に、再現痛・再現症状(辛い時の痛みや、ここではグラグラとしためまい感など)がみられた部分にも刺鍼。
原因筋2:板状筋群(頭板状筋・頚板状筋)
特徴
後頭部から頚椎にかけて走る「首の梁」。
厚みの薄い筋肉ですが幅が広い形で、後頭骨にくっつく部分では度々関連痛を引き起こします。
頭を後ろから支える働きを持ち、前方頭位が続くと常に引き伸ばされた状態で働き続けます。
慢性の後頭部痛や頭の重さを訴える患者では、この筋群の硬結が高頻度で見られます。
トリガーポイント症状
・後頭部や頭頂部の重だるさ、眼の奥の疲れ、上を向くと痛む感覚
・関連痛領域:後頭部から頭頂部、さらにこめかみや目の奥にかけて放散。
長時間座位で「頭を支えにくい」「首の後ろが詰まる」と訴えることが多いです。
当院での施術
特徴にもあるように浅層にある薄い筋肉なので、施術者が触る事は容易ではあるものの、マッサージ・鍼できちんと施術し分ける際は、コツが必要な部分です。
頭蓋骨の後頭部の筋肉が張り付いてくる部分に指やマッサージツールでしっかり押し当てたり、骨の際(筋肉が後頭骨にくっ付くところ)の部分がとても大切な部分で鍼を並べます。
原因筋3:半棘筋群(頭半棘筋・頚半棘筋)
特徴
首を強く伸ばす筋で、姿勢支持の要。
ストレートネックでは、頚椎前弯が減少した分を補おうとして無意識に緊張し続け、深部のコリを形成します。
トリガーポイント症状
・後頭部中心の鈍痛、首の奥のつっぱり感、眼精疲労
・関連痛領域:後頭部中央から頭頂部、側頭部、場合によっては目の奥や後頚部全体へ広がります。
「首の内側が固まって抜けない」と訴える患者に多く見られます。
当院での施術
厚みもしっかりとあって、施術者がこの筋肉を触り分けるのは容易ですが、見つけた筋肉の塊を「時間が経ってくっつきあったパスタを」ほどく様に丁寧に触り分けていく事が求められます。これが出来ない鍼を刺しいた際と奥に潜む、大後頭神経に鍼が刺さって痛い思いをしてしまいます。
技術や知識の差の出やすい部分であり、目の奥の痛みなどの症状に直結することの多い大切な筋肉ですので丁寧に時間をかけてほぐします。
原因筋4:僧帽筋(上部線維)
特徴
肩から首にかけて広がる大きな表層筋。
デスクワークや前傾姿勢で常に引き伸ばされ、持続的な張力がかかるため、
ストレートネックでは「肩がもっこりしてドレスがかっこよく着れない」というお悩みもおききする筋です。
トリガーポイント症状
・首や後頭部の重だるさ、頭重感、側頭部の違和感
・関連痛領域:首の付け根から肩上部、側頭部、耳の後ろ、時に顎の下まで放散。
「首と肩が一体化しているように重い」と訴える患者が多いです。
当院での施術
筋肉の真ん中に当たる皆様も肩こりの硬い部分と自覚しやすい肩上部は上部線維と中部線維が重なってくる部分なので大切なのですが、きちん筋肉をめくりあげて区別して触り、硬い筋肉の中にある更に細かい凝り「索状硬結」を丁寧に探していきます。これを逃がさず鍼先で捉えていきます。
また、この僧帽筋上部は鎖骨に付着します。トリガーポイントの出来やすい部分は大原則として筋肉の骨への付着部にとても出来やすいです。的の広い筋腹(筋肉のふっくらした部分)は容易にマッサージ出来ますが、本当に大切なのは実は「端っこ!」これを丁寧にマッサージしていきます!
肩こり感に対してよりも首・頭の痛みや動きの制限の原因手して大切な筋肉です!
過去ブログ 僧帽筋が本当の原因?硬い肩こり改善のためのトリガーポイント施術・ほぐし方について
原因筋5:最長筋(頭最長筋・頚最長筋)
特徴
脊柱起立筋群の中核で、姿勢を支える「深層の支柱」。
ストレートネックでは、この筋が過剰に緊張し、首をまっすぐに保ちすぎることで自然な可動性を失わせます。
トリガーポイント症状
・首後面の張り、肩甲部のだるさ、長時間座位で首が重くなる
・関連痛領域:後頚部から肩甲骨上縁、背中上部にかけて痛みが放散。
「背中から首にかけて鉄板のよう」と表現されることもあります。
当院での施術
その名の通り腰まで続く長い筋肉であり、幅広く施術することを心がけています。ただし特に後頭骨から起こる頭最長筋は特徴的な走行をしており、頚部の回旋動作において、とても重要であるため回旋動作にご本人でも自覚のない範囲でも制限があった場合には本数もかけてしっかりと刺激します。マッサージでは筋線維を押しつぶすのではなく、ピーンと張った線維を弓を引くように引っかけるようにしてストレッチをかけるように刺激を加えていきます。
マッサージを日頃から受け慣れている方にこそこの感覚をお試しいただきたいです!
まとめ:ストレートネックは「支える筋」のアンバランスから
ストレートネックの背景には、以下のような筋バランスの崩れがあります。
・胸鎖乳突筋が短縮し、頭を前方に引き寄せる。
・板状筋群が伸張位で固定され、後頭部から頭頂部への痛みを生む。
・半棘筋群が深層で過活動し、後頭中心や眼の奥に痛みを広げる。
・僧帽筋上部が慢性緊張し、肩こりや頭重感を引き起こす。
・最長筋が深層で固まり、首の可動性を奪い「まっすぐ過ぎる首」を形成する。
---
おわりに
ストレートネックは「骨格の変形」ではなく、首を支える筋肉の疲弊とアンバランスが根本原因です。
トリガーポイント鍼治療では、これらの筋を個別に評価し、
浅層から深層まで順に緩めていくことで、首の軽さと姿勢の回復を目指します。
しかし、手を掛けず、解消されずにストレートネックが放置されたまま、ディスクワークでディスプレイとにらめっこになる事で後頭下筋という深部の細かい筋肉にトリガーポイントが波及して、さらに強固な症状を起こします。
そこで次回は**「パソコン姿勢と後頭下筋群の負担」**をテーマに、
上頭斜筋を中心としたストレートネックの“隠れた原因”を掘り下げていきます。
